紅茶販売所 ねこまちティーズ

毎日の美味しい一杯のために!

あおねこのお話『今日は死ぬのにもってこいの日』

 

『今日は死ぬのにもってこいの日』だな、ふとそう感じる時がある。
晴れた日でとても穏やかな空気が流れる日。
別に死にたいと思っているわけではないのだけど、昔読んだアメリカ先住民の本を思い出してね。

こういう日は大抵、お店は暇。
だからぼくはゆっくりと気持ちを落ち着かせて紅茶を飲む。
時には本を読みながら、時には遠い異国に想いを馳せながらね。
本当はこういう日こそ店内がおしゃべりで溢れるといいのだけど、みんな遊びに行っちゃうのかな。

そんなことを考えていると常連さんのご来店だ。
「こんにちは、いらっしゃいませ」
「こんにちは、いつものディンブラでストレートをいただこう」
常連さんは決まってセイロンティーのディンブラを注文する。
ストレートティーかミルクティーかをその日の気分で変えるみたいだ。
「店長、今日はとても天気のよい日だね」
「とても良いですね」
「こんな日は死ぬのにもってこいな日だ」
「え、ぼくもそう思っていたところですよ」
「ははは、死にたいわけではないが、死ぬ時くらい穏やかに死にたいものだよ」
満面の笑みを浮かべ、常連さんはそう言った。
そのあとは紅茶を飲みながらゆっくり本を読まれていた。

ぼくの紅茶店には紅茶とちょっとしたお菓子しかない。
紅茶を楽しむのにはそれくらいで十分だと思っている。
これから親しい人とのお喋りとお客さんの好きな時間に使ってもらえたら嬉しい。
ぼくも死ぬ日が訪れるなら、こんな日に紅茶を飲みながら大好きな本でも読んでいたいものだ。

『ぼくは青い猫、紅茶の好きな猫』