紅茶販売所 ねこまちティーズ

毎日の美味しい一杯のために!

あおねこのお話『屋根裏部屋のようなお店』

 

ぼくのお店は1階と2階がある。
1階は茶葉の販売と小さなキッチンスペース、2階はテーブルや椅子を置いて紅茶をゆっくり楽しんでもらうことができるスペース。
ぼくはこの2階のことを「屋根裏」と呼んでいる。
なんで「屋根裏」と呼んでいるかというと、ぼくが1ヶ月ほど滞在したパリのアパルトマンを思い出す雰囲気で。
大きく古いアパルトマンの最上階にある、狭い屋根裏のような作りの部屋が何となくぼくのお店の2階似ているんだ。
外観も少し似ているし、直感的にここに決めた。

いまだにあの狭い部屋を思い出す時がある。
ベッドと小さなキッチン、ぼくがやっと入れる狭いシャワー。
窓を開けて外を見ると、絵本で見たような世界が広がっていた。
空にも手が届くような気がした。

ぼくはこの部屋を1ヶ月くらい借りて、別に何の目的もなくパリで過ごした。
朝起きてクロワッサンに木苺のジャムを塗って食べる、そしてパリ中を地下鉄で移動しながらインスタントカメラを片手に散策して、夜にはアパルトマンの前にあるスーパーでサラダと牛肉を買って夕飯にした。
たまにはファストフード店の「Quick」でハンバーガーも食べたな。
基本的にフランス語は喋れず簡単な英語しか喋れないしお金が無いので、外食と言えばサンドウィッチかハンバーガだった。
でも「カフェクレーム」だけは覚えたので、カフェでは何も困らなかったよ。
ミルクたっぷりのコーヒーはとても美味しかった。

時たま、またパリに行きたいなと思う時がある。
でも今はこのお店があるし、ぼくが大好きな萩原朔太郎はフランスに想いを馳せても実際は行けなかった。
それを考えると人生の中で何度か訪れることが出来たことだけでも幸せなのかもしれない。
あの時の思い出に似た、「屋根裏」のあるお店で紅茶を淹れているしね。

「ぼくは青い猫、紅茶の好きな猫」